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書道の話

2009年11月26日

カテゴリー:その他

 

POCクリニカルリサーチのWEB全般を管理してる木場です。
いつも読んでくださっているみなさま、ありがとうございます。
本日は、書道部に所属したことは一度もない書道科出身の木場が担当します。

芹沢のマネして、私も自分の専門について記事にしてみようと思います。
大学では、芸術書道を学びました。
私の大学の書道科は、他の大学にはない特徴がいくつかありました。

1.サイズが大きい
アホ程大きくて、書くのが大変です。
大きい作品を作る理由は単純で、学内に芸術館という展示用の建物があるのですが、その壁面が大きいからです。
展覧会で、壁面がある程度埋まっていないと寂しくて様にならないので、仕方なく大きい作品を作るようです。
使う紙は、全紙(ぜんし)という横約70センチ縦約140センチの紙ですが、それを何枚も継ぎ合わせます。
紙を継ぐだけで一苦労なので、休憩をしないと書き始められません。
書くのも時間がかかるし、翌日は確実に筋肉痛になるので、私たちの代では「アスレチック書道」と呼んでいました。
私が学生時代に書いた作品で一番大きかったのは、全紙を縦に2枚、横に6枚継いだもので、書くのに1時間かかりました。

2.墨が濃い
「超濃墨(ちょうのうぼく)」と呼ばれる、とっても濃い墨を使います。
大学で「これを使いなさい」と言われる筆が「羊毛長峯(ようもうちょうほう)」という筆で、羊のお腹のあたりの柔らかい毛を使った、毛足の長い筆です。
この筆を使うには、超濃墨を使わないと上手く書けません。
墨が薄いと、筆が上手く動かなくなってしまうし、ボリュームが出なくなってしまうからです。
でも、この超濃墨は、墨を濃くすらなければいけない上に大量に使うので、作るのに時間がかかります。
書道科の必殺技「墨すり機」を使っても数時間かかるので、夜寝る前に「墨すり機」に墨をセットして、一晩回しておきます。
墨のセットの具合によっては、朝起きても薄い日があり、そういう日は書けません。
上手くすりあがっていても、掛けた墨が短くて金具で硯が傷ついていることもあるし、なかなか読みと兼ね合いが難しい作業です。
無事にできた墨も、墨すり機の仕上がりは荒いので、書く前にきちんとした硯を使って手ですって仕上げをしてやらなくてはいけません。
紙の粒子に墨が入っていかないとかで。
また、作品制作の時にもこれがネックになります。
なかなか乾かない。
場所があるときは良いのですが、場所が限られている場合は乾くまで待っていなくてはいけないので、一晩徹夜しても3枚くらいしか書けない日もあります。
準備に30分、紙を継ぐのに30分、仕上げの墨すりで30分、書くのに1時間、乾くのに2時間。
まあ、1日がかりの作業なのです。

3.印も自分で彫る
書道の作品には、赤い印泥でハンコがおされています。
書いた人の名前を彫ったハンコですが、一般の書家は自分では彫らずに篆刻家の方にお願いして作って頂くことが多いようですが、うちの大学は、このハンコも自分で彫っていました。
学生なのでお金がないのもありますが、なんだか自分で彫るような雰囲気でした。
でも、それは1年生の時だけで、2年生からは得意な人に物々交換で彫ってもらったりします。
同期に必ず一人は篆刻の得意な人がいるので、その人にオレンジカードと交換とかで彫ってもらったり、親切な先輩に彫ってもらったりしました。
社会人になってから作った作品にも、それらの印を使っています。
T君、Y先輩、ありがとう!

4.表具も自分たちでやる
サイズが大きいので、普通の表具屋さんに出すとバカ高になります。
なので、自分たちで表具もやります。
継いだ紙を一枚ずつに分解し、水をかけて伸ばし、「鳥の子紙」という紙で裏を打って、ベニヤで作ったパネル(もちろん手作り)に張りこみます。
これがまた体力勝負で、朝から晩まで馬車馬のように働いて3日くらいかかります。
しかも、十分乾ききっていない作品の墨ダマリが水で滲んだりして、書いた人が「うえー」っとなったりします。
パネルに張りこんだ作品は、一晩乾かしてから切り出し、また元の状態に継いでいきます。
このとき、元の状態に継げない場合があります。
もともと紙のサイズがきちんとしていなかったり、超濃墨で紙が収縮したりして、紙の上下が合わなくなるようです。
その時は、霧吹きで水をかけ、みんなで端っこを持って揺らします。
そうすると紙が伸びるので、それでサイズ調整をします。
この揺らすのが、何かの儀式じみていてちょっと不気味だったりします。
でも、これをやらないと線が繋がらなくなってしまうので、書いた人は真剣に指揮を取ります。
「左は動かないで!右の人、引っ張りながら揺らして!ちょっとね、ちょっと!」とか。
作品が元の状態に継げたら、作品用のパネル(これも手作り)に張りこみ、新聞紙をかけて本番まで保管します。
これに4日くらいかかります。

こうして作った作品を、これまた自分たちで搬入・飾り付けをします。
こんなことを1年に2回、4年のときには3回やって卒業します。
当時は「書道をやってるなんて、落ち着いていて女性らしくて良いですね」などと言う方もいましたが、とんでもない。
むしろ、体力勝負なうえに団体競技的な側面もあり、正座をして字を書くなんてことはほとんどない世界でした。
徹夜も多いし、喧嘩もするし(表具の時、疲れてるから)、肌は荒れるし、手も服も汚れるし、晴天の日曜日にジャージで墨だらけだし。
また、墨を大量消費するし、紙も大量消費するし、筆は高いし、お金のかかる学科でもありました。

最近、すっかり書道をお休みしていますが、社中(書道の団体の一般的な呼び方)にはまだ所属しているので、来年には再開したいなーと思っています。

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